荻窪Doctor’s コラム虚血性心疾患
2019.07.19(2019.07.25更新)
ステントレス治療について
ステントレス治療について
下記内容は個人的見解が多数含まれていることを了承して頂きたい。普段の日常診療においてはガイドラインを逸脱した治療は行なっていないことをここに明確にする。
さて、PCIの治療は急性冠症候群に対して緊急又は準緊急で行うものと、安定狭心症に対して待機的に行うものに分けることができる。個人的にはPCI治療の際に、ステント留置が必要なのかどうかは常に念頭に置いて病変を観察することを基本としている。病理学的検討や過去の臨床研究によれば理論上急性冠症候群の一定割合はステント留置が必須ではない。もちろんステント治療の成績の良さに疑いはないが、いかに第3世代以降のdrug eluting stent(DES)といえども金属という異物が血管内に残る以上は晩期のneoatherosclerosis が今後も解決されるとは思えない。安全に治療できるのであればステントレス治療を考慮したい。
具体的には急性冠症候群の原因としてのerosion、冠動脈解離、塞栓、calcified nodule などの病変は、ステント留置を避け得る、もしくは避けた方が良いと考えられる。そのために血管内イメージング、特にoptical coherence tomography(OCT)を積極的に使用することとしている。また同様に、待機的症例においてもdrug coated balloon(DCB)によるステントレス治療は考慮すべき選択肢である。
2018年のヨーロッパ心臓病学会で3mm未満の冠動脈新規病変の治療においてDCBのDESに対する非劣勢が報告された[1]。追跡期間はわずか12ヶ月であり、比較の仕方に問題も指摘されてはいるものの、新規病変に対するDCB vs DES の初の前向きrandomized study であり、hard endpoint で見た長期フォローアップの報告が待たれる。当院では2014年から2017年までで15患者の16の新規病変にDCBによるステントレス治療が行われた。うち12患者で冠動脈CTまたは冠動脈造影でのフォローアップが行われ、標的病変再血行再建は0例であった。残りの3例中1例は追跡不能、2例は症状なく外来通院中である。適切な病変選択によりステントレス治療が可能となるであろう。
参考文献
[1] Jeger RV, Farah A, Ohlow M-A, Mangner N, Möbius-Winkler S, Leibundgut G, et al. Drug-coated balloons for small coronary artery disease (BASKET-SMALL 2): an open-label randomised non-inferiority trial. The Lancet. 2018;392(10150):849-56.